公共調達におけるゼロ・低エミッションカー比率を導入するEU指令案:EU理事会が承認、まもなく指令公布へ

EU理事会は2019年6月13日、クリーン自動車指令2009/33/ECの改正指令案を承認したことを発表すると共に、その法文テキスト文書(PE-CONS 57/19、欧州議会と理事会の共同文書、2019年5月24日付、文末の関連文書に原文あり)を公表した。この改正指令は初めて、公共調達自動車に占めるゼロ・低エミッション自動車の、拘束力を伴う最低比率を加盟国毎に定めるものである。

 

  1. 背景

2009年6月4日に施行された「クリーンでエネルギー効率のよい一般道路車両の促進に関する指令2009/33/EC」(CVD:Clean Vehicles Directive)は、クリーンでエネルギー効率の良い自動車の市場展開を促進することを目的として、官公庁やその他の関連事業体が自動車を調達する際の調達基準を定めるもので、車両使用期間中のエネルギー消費量、二酸化炭素(CO2)、さらに窒素酸化物(NOx)などの有害物質の排出量を考慮することを求めると共に、その計算方法を規定している。欧州委員会は2017年11月、この改正指令案(COM(2017)0653)を提出。2019年2月11日には欧州議会ならびにEU理事会の代表者が同案についての暫定合意に至り、2019年4月19日に欧州議会がその内容を承認した。

 

  1. 新指令のポイント
    • クリーン自動車の定義(第4条)
  • M1、M2あるいはN1カテゴリーの自動車のうち、そのテールパイプからのエミッションが、最大でも、附属書の表2に示されている値(CO2g/km)に準じており、かつ、そのRDE大気汚染物質エミッションが、附属書の表2に定められている、現行の排出規制値に対する割合(パーセンテージ)を下回るもの。あるいは、
  • M3、N2あるいはN3カテゴリーの自動車のうち、「代替燃料供給インフラの展開に関する指令2014/94/EU」の第2条(1)と(2)で定義されている代替燃料(報告者注:電気、水素、バイオ燃料、合成・パラフィン系燃料、天然ガス、液化石油ガス(LPG)がこれに該当)を使用するもの。ただし、間接的土地利用変化リスクの高い供給原料から製造される燃料は除外とする。なお、液体バイオ燃料あるいは合成・パラフィン系燃料を使用する自動車の場合は、これらの燃料を在来型の化石燃料と混合してはならない。

 

【附属書 表2:クリーン軽量自動車(clean light-duty vehicles)向けエミッション閾値】

カテゴリー 20251231日まで 202611日以降
  CO2 g/km RDE大気汚染物質エミッション*:

排出規制値**に対する割合として

CO2 g/km RDE大気汚染物質エミッション*:

排出規制値**に対する占める割合として

M1 50 80% 0 該当なし
M2 50 80% 0 該当なし
N1 50 80% 0 該当なし

* 「EC適合証明書(EC Certificate of Conformity)」(指令2007/46/EC附属書IXで規定)のポイント48.2で報告されている、≪超微粒子(PN)≫(単位:#/km)及び≪窒素酸化物(NOx)≫(単位:mg/km)の実路走行時エミッション(RDE)最大値(申告値)。全RDE試験ルートとUrban(市街路)RDE試験ルートの両方を対象とする。

** 規則(EC)715/2007附属書I 及びその改正法に規定されている、有効な排出規制値

(出所:欧州議会及び理事会PE-CONS 57/19 附属書 表2)

 

  • 最低調達目標の設定

「最低調達目標(minimum procurement targets)」は、公共調達全車両に占めるクリーン自動車の比率を、それぞれ2025年末と2030年末を期限とする、二つの基準期間を対象として、自動車の種類及び加盟国別に定めたものである。具体的な数値は、文書PE-CONS 57/19 附属書の表3(クリーン軽量自動車)と表4(クリーン重量自動車)に示されている。

 

  • 適用範囲の拡大

指令の適用範囲は「購入以外の調達」、すなわち車両リースや分割払い式購入(rent or hire-purchase)にも拡大される。また、新しいルールは道路輸送サービス、緊急旅客輸送サービス、ごみ収集、郵便・小包配送サービス等の幅広い公共サービス分野でも適用される。

 

  1. 今後の展開とスケジュール
  • 2019年6月20日:欧州議会と理事会のそれぞれの議長による署名が予定されている。指令はその後、EU官報に掲載され、それから20日後に発効する。
  • 指令発効から2年後:加盟国における国内法化期限
  • 2026年4月18日:加盟国による欧州委員会への実施状況に関する初回報告期限。以降、3年ごとの報告が義務付けられている。

 

  1. 関連文書

EU理事会が2019年6月13日に公表した法文テキスト文書PE-CONS 57/19:

http://data.consilium.europa.eu/doc/document/PE-57-2019-INIT/en/pdf