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Kia Motors Iberiaがスペイン国内ディーラーに電動車の登録延期を指示

今年8月に韓国・起亜自動車(Kia Motors)のスペイン支社取締役がスペイン国内の全ディーラーに宛てた、「2019年11月1日以降、電動車の登録を延期するよう」指示する内容の文書がツイッター上で出回った。これを機に、以前からあった、メーカーによる作為的なEV供給遅延の疑いに関する議論が再燃している。

 

文書の概要

問題の文書は、2019年8月1日付けで、Kia Motors IberiaのJavier Casado販売企画・物流担当取締役(Director Sales Planning & Logistic)の名前で、スペイン国内の全ディーラーに宛てられたもので、ポイントは以下の通り。

  • 10月1日以降、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)のインボイス発行を延期すること。
  • 11月1日以降、EVとPHEVの登録を延期すること。
  • 本文書に記されているこれらすべての「義務(obligations)」は、「避けられない(unavoidable)」ものであり、「例外なく、一律に(without exception)」順守されなければならない。
  • 以上の規制は、2020年1月1日をもって解除する。

 

生産遅延か、あるいはメーカーの策略か

Kia Europeの最高執行責任者(COO)であるEmilio Herrera氏は、本措置の理由として、バッテリーの入荷が間に合わないことを挙げている。一方、欧州のNGOであるTransport & Environment (T&E)は、「(本件は、)2020年からのEU自動車CO2排出規制の厳格化(注1参照)を前に、クリーンカーの販売を先送りにし、(実入りの多い)SUV販売を通して利益を最大化しようとする、一連の自動車メーカーの策略が浮き彫りにしている」との見方を示している。

 

自動車専門家による分析

メーカーがEV供給を操作しているのかどうかという点については、すでに2019年4月、ドイツの自動車ジャーナリストChristoph M. Schwarzer氏が詳細調査の結果を公表している。同氏は分析にあたって、以下のEUのCO2排出規制の法的要素を引き合いに出している。

  • 「スーパークレジット(super credits)」の運用には上限が設定されている(注2参照)
  • 2021/2020年向けCO2排出目標値はいずれもNEDC(新欧州ドライビングサイクル)をベースとしているが、2021年1月1日以降はWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)をベースに算出される
  • メーカーは、2030年には、罰金を回避するにあたり、これまでのような絶対的なCO2削減目標値の達成を証明する必要はなくなる(注3参照)

 

これらの要素を踏まえ、複数の自動車専門家のコメントが紹介されている。以下に、その一部を挙げる。

  • 国際クリーン交通委員会(ICCT)CO2関連法規担当 Jan Dornoff, Fachmann氏:

「現在、各社のモデル平均CO2 排出量削減が停滞気味であることや、 目標値を達成できなかった場合に科される高い罰金に鑑みると、純粋な電気自動車(BEV)の販売を遅らせることによるメーカーのメリットはわずか、あるいはまったくない」

  • ドイツ・ベルギッシュ・グラートバッハ応用科学大学自動車研究センター所長Stefan Bratzel氏:

「メーカーがEV需要の高まりを過小評価していた可能性は十分にある。工業プロセスがエレクトロモビリティに対応できるようになるには一定の時間がかかる。大手自動車メーカーがEVの供給不足を作為しているとの憶測には、私は極めて用心深い立場をとっている」

 

注1:EUでは、規則(EU)No 333/2014により、2020年から(2020年は新車全体の95%で)新車乗用車の平均CO2排出目標値95g/kmが適用される。自動車メーカーは、当該年の自社モデルのCO2排出量の平均値が、同規則附属書Iに従って規定された「排出目標値(Specific emissions targets)」を超過した場合、登録自動車一台につき、1g/km 超過ごとに95ユーロの罰金(excess emissions premium)を支払わなければならない。

 

注2:スーパークレジットは、「超低排出自動車」(50g/km未満)の販売に与えられるインセンティブ。2020年までは、CO2排出量が50g/km未満の自動車は2台の車両としてカウントされるが、2021年にはこれが1.67台、そして2022年には1.33台に引き下げられる。ただし、各メーカーが2020~2022年の3年間にスーパークレジットでまかなうことができるのは、目標達成に向けた努力のうち最大7.5g/kmと言う上限(cap)が設けられている。

 

注2:2019年4月25日公布の「EUの乗用車と小型商用車を対象とした新たなCO2排出基準を定める規則(EU)2019/631」では、新たな乗用車向けのCO2排出規制として、「2030年に2021年基準比で37.5%削減」とする相対的な目標が設定された。