欧州議会とEU理事会は2019年2月18日、EU初の重量車(新車)の二酸化炭素(CO2)排出基準を設定する規則案についての暫定合意に至った。EUで販売される新しいトラックとバスには、2030年までにCO2平均排出量を2019年比で30%削減、そして2025年向け中間目標として2019年比で15%削減することが求められるようになる。これらの目標値は拘束力を持ち、達成できなかった場合、メーカーは罰金(Excess emission premium)を支払わなければならない。
EUは昨年12月、2020年以降の新しい乗用車と小型商用車のCO2排出規制に関する合意に達している。今回、これに続いて重量車でも合意に至ったことを受けて、欧州委員会のプレスリリースには、「これは、今のユンカー欧州委員会が発表した『クリーンモビリティ法案パッケージ(Clean Mobility Package)』の一部として、EUモビリティ部門の近代化を進め、また今世紀後半における気候ニュートラル化に備えるための、さらなる足掛かりである」と述べられている。
なお、欧州のNGO「Transport & Environment」の情報によると、重量車メーカーは2025年まで「スーパークレジット(super credits)」(各メーカーのCO2平均排出量を計算する上で、ゼロエミッション自動車(ZEV)及び低排出自動車(LEV)の販売台数に特定の係数を乗じることを認めるもの)を使うことができるが、2025年からはこれに代えてベンチマーク方式が導入される。これは、新車トラック販売台数に占める電気自動車及び水素自動車の割合が2%以上のメーカーを対象に、CO2排出目標値を緩和するというインセンティブである。欧州議会のプレスリリースにも同方式についての言及があり、メーカーに代替駆動トラックへの投資を動機付けるのが狙いとされている。
さて、これまで「30年に16%削減」を主張してきた欧州自動車工業会(ACEA)は今回の合意内容について、「非常に厳しい要求である。その実施に影響を及ぼすのが重量車メーカーだけではない上に、目標値のベースラインがまだわかっていないというのは、なおさら厳しい」と評している。Erik Jonnaert事務局長は特に、ベンチマーク方式の導入は「需要サイドを完全に無視したもの」として非難し、「EUの政策立案者は、メーカーに割り当てられることになるゼロエミッショントラックが、実際に運送業者によって購入、利用されるようにするための策を講じなければならない」と述べている。
今後の展開とスケジュール
今回の暫定合意は、これから欧州議会及びEU理事会による正式な承認を必要としているが、5月末までには一連の手続きが完了する見通しとなっている。なお、本規則はEU官報での発表後、直ちに発効する。
関連文書
- 2019年2月18日発行 欧州委員会プレスリリース
http://europa.eu/newsroom/rapid-failover/ip-19-1071_en.pdf
- 2019年2月19日発行 欧州議会プレスリリース
- 2019年2月19日発行 欧州理事会プレスリリース