2019年1月31日に現地で報じられたところによると、タイ工業省工業経済局(OIE:Office of Industrial Economics)は国内の自動車メーカーおよびディーラーに対し、国内で販売する全ての車について、2021年までにEuro 5排ガス基準に適合するよう命令した(ハイブリッド車およびプラグインハイブリッド車についてはEuro 6)。自動車業界は今後1、2年の間に適合を完了しなければならないこととなる。
今回の動きは、スモッグおよびPM2.5の低減につながると期待されているが、国家環境委員会の計画ではEuro 5への移行は2023年の予定であった。現在の適合状況は以下のとおりである。
- タイ国内製造(国産)の乗用車およびピックアップトラックはEuro 4に適合
- 国産のエコカー27車種(政府主導のエコカープロジェクトのフェーズ2に該当するもの)はEuro 5に適合
- 中型車および大型車は国産11車種、輸入車19車種がEuro 5に適合
- 輸入車84車種がEuro 6に適合
- 既存のディーゼルのバス、トラックのみがEuro 3に適合
OIEの事務局長Nattapol Rangsitpol氏は、OIEが行った調査の結果、全ての車両が2年以内にEuro 5に適合すれば、タイは2020年以降PM2.5を80%(3万7391トン)削減できることが判明したという。OIEはEuro 5への移行を勧告したが、多くの自動車メーカーが、Euro 5への移行により車両1台あたり1万5000~2万バーツ(5万3000円~7万1000円)のコスト増につながるとして、その計画に反対した。これに対し、Nattapol氏は次のように語る。「我々は既に増加するコストを計算していますが、その額はメーカーが主張するほど高くありません。」OIEは未だメーカーからEuro 5への移行ついて前向きな反応を得ていないという。「しかし、市場の動きから判断するに、各メーカーはEuro 4ではなくEuro 5に適合した新モデルを導入しています。」なおドイツでは2018年、徹底的な裁判所による試験を経て、Euro 5に準拠していない全てのディーゼル車の走行を禁止した。
2019年1月15日、タイ・エネルギー省は、Euro 5に適合する燃料へのアップグレードについて国内の6つの製油所と協議した。これに関しNattapol氏は次のようにコメントする。「私は、国内のすべての関連機関が環境政策を変更する時が来たと考えています。Euro 5および6の基準は1~2年以内に施行されるべきなのです。我が国は、欧州各国に14~15年も遅れるわけにはいきません。たとえ当初はコストが増加したとしても、国内のステークホルダーが支援すべきなのです。」Nattapol氏は大気汚染によって国民にかかる金銭的負担として、N95マスクに年間1万8250バーツ(約6万5000円)、エアフィルターに一世帯当たり1万9900バーツ(約7万円)と指摘する。バンコクの人口は1100万人であるため、マスク費用の総額は年間2000億バーツ(約7080億円)を超える計算となる。