2019年2月26付EU官報で、「重量自動車(heavy-duty vehicles)の二酸化炭素(CO2)排出量と燃費の特定に関連して、規則(EU)2017/2400ならびに指令2007/46/ECを改正する2019年2月19日の委員会規則(EU)2019/318」が公布された。これに伴い、2020年7月1日以降、新しい重量車には実路走行ベースの検証試験手順の実施が義務付けられることになる。
規則原題:
Commission Regulation (EU) 2019/318 of 19 February 2019 amending Regulation (EU) 2017/2400 and Directive 2007/46/EC of the European Parliament and of the Council as regards the determination of the CO2 emissions and fuel consumption of heavy-duty vehicles
規則原文:
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2019/318/oj
背景
EUでは段階的アプローチにより重量車CO2排出規制の法制化が進められている。2月18日には欧州議会と理事会が具体的な排出削減目標に関する暫定合意に達し、5月末までには目標値を定める規則が制定される見通しとなっている。これに先立ち、以下の二つの関連規則が既に発効している。
- 重量車のCO2排出量と燃費の測定に関する規則(EU)2017/2400(通称:Certification Regulation)
- 重量車のCO2排出量等のモニタリングと報告に関する規則(EU)2018/956
モニタリングと報告に関する規則(EU)2018/956(上記(2))は、重量車メーカーに、2019年1月1日以降、新車のCO2排出量と燃費をモニターし、これらのデータを毎年欧州委員会に報告することを義務付けている。そして、これらのデータを特定するためのEU共通の方法を定めるのが、Certification Regulationと呼ばれる規則(EU)2017/2400(上記(1))である。同規則は、新車のCO2排出量と燃費をVECTO (Vehicle Energy Consumption Calculation Tool)というシミュレーションツールを使用して特定することを重量車メーカーに義務付けている。
規則(EU)2019/318の構成
本規則は、以下の全3条とI~XIの6つの附属書から構成されている。
第1条 規則(EU)2017/2400の改正
第2条 指令2007/46/EC(型式認証枠組み指令)の改正
第3条 発効と適用
規則(EU)2019/318のポイント
CO2排出削減の達成には、新しい重量車の実際のCO2排出量が、VECTOを使って特定された値と一致している必要がある。このために本規則は、
- VECTOのオペレーション
- CO2排出量と燃費に影響を及ぼすコンポーネント、独立した技術ユニット、システムを対象とする認証
の適合性を検証するにあたって、規則(EU)2017/2400が定める試験手順に加え、実路走行による新しい検証試験手順(VTP:verification testing procedure)を導入する。VTPでは、VECTOのミッションプロファイルに近い条件の下での実路走行を行い、この際に車両のホイールトルク、エンジン回転速度、ギアの位置、そして燃費の測定を行う。この測定値が、VECTOで算出された燃費と一定の許容範囲内で一致していることがVTP合格の条件となる。つまりこれは、数値シミュレーション結果を物理試験で検証するという、これまでのEU自動車型式認証関連法規にはなかった新しいコンセプトである。なお、VTPを実施するのは製造者であり、これを証明するのは加盟国の認証当局である。
今後の展開とスケジュール
本規則は、EU官報での発表から3 日後に発効する。第2条は2019年9月1日から適用される。VTPは2020年7月1日から義務付けられる。