RDE(Real Driving Emission)の導入に伴うEuro 6ディーゼル自動車の窒素酸化物(NOx)排出基準値の修正をめぐる欧州委員会と欧州3都市の間の訴訟手続きが、上級審に進むことが明らかになった。欧州委員会の広報担当者が2019年2月21日、「欧州委員会は、EU一般裁判所による第一審判決に対する不服を理由として、欧州司法裁判所への上訴を決定した」と伝えた。
本訴訟のポイント
- EUでは、自動車型式認証の枠組みの中でRDEの導入が始まっている。RDEは公道走行状態での排出ガス試験であり、これまでの台上試験を補完するものである。
- 欧州委員会はRDE導入に際し、規則(EU)No 715/2007(文末関連法規(1))の下で定められているEuro 6ディーゼル車向けNOx排出基準値「80mg/km」について、移行期間中の措置として一定の許容範囲を認めることにした。新しい基準値は、第二次RDE規則(EU)2016/464(文末関連法規(2))の中で規定されており、第一段階(Euro 6d-Temp)では「168mg/km」、また第二段階(Euro 6d)では「120mg/km」となっている。
- しかし、既にディーゼル車の走行規制を導入しているパリ、ブリュッセル、そしてマドリッドの3つの都市が、これを不服として欧州委員会を提訴した(事件番号(): T-339/16、T-352/16、T-391/16)。
- EU一般裁判所はこれを受け、2018年12月13日、「欧州委員会はその権限を逸脱し、Euro 6のNOx基準値を不当に修正した」と判決し、第二次RDE規則(EU)2016/464の見直しを求めた(文末関連法規(3))。
今後の展開とスケジュール
その後2019年2月26日には、ドイツ連邦政府とハンガリー政府も、同判決に対する法的手段(「Rechtsmittel」、確定遮断効と移審効を有する上訴(控訴、上告及び抗告を含む)を指す)を決定したことが、欧州司法裁判所によって発表された。一連の手続きは、以下の事件番号(Az.)の下で進められる。裁判のスケジュールは、まだ確認できていない。
- C-177/19 P:ドイツ連邦政府/パリ市他
- C-178/19 P:ハンガリー政府/パリ市他
- C-179/19 P:欧州委員会/パリ市他
なお、前出の欧州委員会広報担当者は、新たな法案を提出する可能性も示唆している。
関連法規等
- Euro 5/6規則(EU)No 715/2007:
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/ALL/?uri=CELEX%3A32007R0715
- 第二次RDE規則(EU)2016/464:
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32016R0646
- EU一般裁判所2018年12月13日判決文(フランス語のみ):
http://curia.europa.eu/juris/celex.jsf?celex=62016TJ0339&lang1=en&type=TXT&ancre=