IEA、小型車の世界的な燃費改善の鈍化を警告、特に、先進国の改善が停滞

国際エネルギー機関(IEA)は2019年3月20日、世界燃費性能イニシアティブ(GFEI)による、世界の小型車の燃費改善動向を分析した報告書、『主要自動車市場における燃費:技術と政策の推進要因2005-2017(Fuel Economy in Major Car Markets: Technology and Policy Drivers 2005-2017)』(以降報告書)を発行した。報告書によると、2005~2017年の世界全体の燃費は年平均1.7%改善したが、2015年~2017年は改善率が1.4%と減速している。

先進27か国の平均改善率が年平均わずか0.2%と停滞または悪化したためだが、スポーツ用多目的車(SUV)とピックアップトラックの市場シェア拡大が燃費改善の大きな障壁である。中国やインドなどの新興国では、燃費改善率は2.3%と加速しているが、販売数の急増が懸念されている。GFEIは、パリ協定の目標やSDGs達成には燃費の大幅な改善が不可欠とし、2030年までに小型車の燃費効率を2倍にする目標を設定した。達成には今後、世界全体で年平均3.7%の燃費改善が必要となる。

 

報告書とグローバル燃費イニシアティブ(GFEI)について

GFEIは、世界的規模で自動車の燃費向上を進めることを目的に設立にされたパートナーシップで、IEA、国連環境計画、国際輸送フォーラム、クリーン輸送に関する国際評議会(ICCT)および国際自動車連盟基金等で構成される。報告書は、GFEIの新車登録小型車(乗用車、乗用小型トラックおよび3.5トン未満の小型商用車)の燃費調査資料を基に、ICCTと共同でIEAが作成した。18の主要自動車市場の燃費の動向をレビューした。

 

先進国と新興国の問題

全車種で燃費が改善されたものの、先進国と新興国の問題を挙げた。

  1. 先進国では、大型で燃費効率の低いSUVとピックアップトラックの市場が2015年~2017年に11%増加し、SUVは世界の小型車の40%近くを占め、燃費改善にブレーキをかけている。特に北米とオーストラリアでは2017年のSUVの市場シェアは、小型車市場の約60%近くに達した。
  2. 新興国では燃費は2.3%改善したが、新車販売登録数が大幅に増加している。中国では、2005年~2017年に小型車の新車登録台数が年間17%増加し、インドでは9%、インドネシアでは7%増加した。2005年以降、これらの国々の小型車販売台数は3倍に増え、特に中国では2017年の販売台数が7倍と最大の伸びを示した。

 

政策や電気自動車などの改善効果および、テスト値と走行燃費とのギャップ拡大

報告書によると、規制と購入奨励措置を組み合わせている国では、そうでない国よりも燃費改善の進捗は約60%早く、政策が重要な役割を果たしている。また、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車のシェアが高い市場ではより高い改善率が見られる。一方、テスト値と実際の走行燃費とのギャップ拡大が新たな懸念事項になっている。米国を除き、全市場でテスト結果と実際のCO2排出量の差が10%を超え、最大50%にまで拡大している。

IEA事務局長は、「燃費向上の減速を逆転させ、SDGs達成を軌道に乗せるためにはより多くの努力が必要だ」と述べた。

 

関連文書は以下のURLで見ることができる。

・IEAのニュースリリース

https://www.iea.org/newsroom/news/2019/march/more-efforts-needed-to-accelerate-improvements-in-fuel-economy.html

・報告書(ログインが必要)

https://webstore.iea.org/fuel-economy-in-major-car-markets