英国大蔵省(HM Treasury)は2019年7月9日、WLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)導入に伴う自動車関連税制の見直しをまとめた文書 “Review of WLTP and vehicle taxes:summary of responses” を発表した(英語、23ページ、原文は以下のURLで参照可能)。
背景
EUではWLTP規則(EU)2017/1151の定めにより、2018年9月1日以降、すべての新しい乗用車でWLTP認証が義務付けられている。WLTPベースの自動車CO2排出量は、以前の試験方法であるNEDCベースの排出量よりも多くなる。このため、加盟国政府は、自動車関連税制がCO2排出量ベースであり、WLTP導入がこれに影響を及ぼす場合、消費者保護の観点からこれを調整することが求められている。英国政府は2018年予算において、「Vehicle Excise Duty(自動車税)」(注1参照)ならびに「Company Car Tax(社用自動車税)」(注2参照)への影響や、これらの税率変更の必要性を調査することを予告。そして2018年12月19日に、‘Review of WLTP and Vehicle Taxes’(英語、21ページ、原文は以下のURLで参照可能)を公表し、この内容に関するコンサルテーションを2019年2月17日まで実施した。トータルで195件の回答が寄せられた。
注1:国内の公道を走行する自動車を対象とする年課税。通称Road Taxとも呼ばれる。
注2:通常、従業員が社用車を、通勤を含め私的に利用する場合、これは「現物給付(BiK:Benefit in Kind)」と見なされて課税の対象となる。英国の社用車税制では、2002年4月から、車両の二酸化炭素(CO2)排出量ベースの課税方式が採り入れられている。税額は、車両価格に所定のパーセンテージ(燃料の種類とCO2排出量で決まる)と所得税率を乗じて特定される。
政府決定事項のポイント
同コンサルテーションの結果に基づく政府決定事項をまとめたのが、冒頭に挙げた“Review of WLTP and vehicle taxes:summary of responses” である。ポイントは以下の通り。
- 2020年4月6日以降に登録された自動車について、2020年から2021年まで、その社用車税率を全般に2%引き下げる。その後、これを2021~2022年には1%引き上げ、そして2022~2023年にはさらに1%引き上げて、当初の2020/2021年向け税率に戻していく。⇒ 詳細は、上記文書の附属書Iの表を参照。
- ゼロエミッションカーへの移行を加速するために、あらゆるゼロエミッションモデルを対象に、その社用車税率を2020~2021年は0%(非課税)、2021~2022年は1%とする。そして、2022~2023年に当初の2020/2021年向け税率である2%に戻す。
なお、下表に示す通り、2020年4月6日以降の初期登録車両のうち、CO2排出量が50g/km以下で、かつ電気モーターでの走行距離が130マイル(209km)以上の自動車についても同様の税率が適用される。理論上は、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)も対象となり得るが、この条件を満たすPHEVモデルは現在、存在しない。
2020年4月6日以降に初期登録された自動車 | ||||
CO2排出量
(g/km) |
電気モードでの航続距離(マイル) | 2020年 | 2021年 | 2022~2023年 |
0 | 0% | 1% | 2% | |
1~50 | >130 | 0% | 1% | 2% |
2020年4月5日以前に初期登録された自動車 | ||||
CO2排出量
(g/km) |
電気モーターでの航続距離(マイル) | 2020年 | 2021年 | 2022~2023年 |
0 | 0% | 1% | 2% | |
1~50 | >130 | 2% | 2% | 2% |
(出所:英国大蔵省“Review of WLTP and vehicle taxes:summary of responses”
附属書Iの表の一部を抜粋)
Vehicle Excise Duty については、今年後半にCall for evidence(根拠に基づく情報提供の照会)を発表する。