2019年7月末、第一電動が消息筋から得た情報によると、GB「電動自動車用動力蓄電池安全要求」のドラフト、新国家標準が既にWTOに通報され、認可待ち段階であり、間も無く正式に公布される見込みだという。
これは、GB/T31485-2015「電動自動車用動力蓄電池安全要求および試験方法」とGB/T31467.3-2015「電動自動車用リチウムイオン動力蓄電池パックおよびシステム 第三部分:安全性要求とテスト方法」を合わせ、かつ拡大施行する新国家標準で、2018年初頭に既にドラフトが公開されており、「GB/T」から代わって「GB」に位置づけられている。正式に実施されれば、新国家標準の中の全ての検査が強制的な要求になることを意味している。
「電動自動車用動力蓄電池安全要求」のドラフトによると、動力電池の強制検査項目は全部で22項目あり、電池単体検査(6項目)および電池パックあるいはシステムテスト(16項目)が含まれ、具体的なテスト項目及び要求は下記の表に示す通りとなっている。
番号 | テスト項目 | 試験対象 | 要求 |
8.1.2 | 過放電 |
電池単体 |
引火・爆発無し |
8.1.3 | 過充電 | ||
8.1.4 | 外部ショート | ||
8.1.5 | 加熱 | ||
8.1.6 | 温度循環 | ||
8.1.7 | 圧力 | ||
8.2.1 | 振動 |
電池パックあるいはシステム |
漏洩・外郭破裂・引火と爆発現象無し
テスト後の絶縁抵抗>100Ω/N |
8.2.2 | 機械衝突 | ||
8.2.3 | 模擬衝突 | ||
8.2.4 | 圧力 | 引火・爆発無し | |
8.2.5 | 温熱循環 | 漏洩・外郭破裂・引火と爆発現象無し;
テスト後30分以内の絶縁抵抗>100Ω/V |
|
8.2.6 |
浸水安全 | 8.2.1振動試験通過後の電池パックあるいはシステム | 方式1の実施で、引火・爆発無し;
方式2の実施で、試験後IPX要求を万足させ、漏洩・外郭破裂或いは爆発現象無しで、試験後絶縁抵抗>100Ω/V |
8.2.7.1 | 外部燃焼 | 電池パックあるいはシステム、電池パックあるいはシステムに対して保護作用をするボディー構造は、燃焼試験に参与可 |
爆発無し |
8.2.7.2 | 熱拡散 |
電池パックあるいはシステム |
単価電池が熱制御を失うことで熱拡散を引き起こし、乗員への危険発生の5分前には熱源事故警報を発する |
8.2.8 | 温度衝突 |
漏洩・外郭破裂・引火あるいは爆発現象発生無し;テスト後絶縁抵抗>100Ω/V |
|
8.2.9 | 煙霧 | ||
8.2.10 | 高海抜 | ||
88.2.11 | 加熱保護 | 電池システム | |
8.2.12 | 過流保護 | 外部直流電源より供電可能な電池システム | |
8.2.13 | 外部ショート保護 |
電池システム |
|
8.2.14 | 過充電保護 | ||
8.2.15 | 過重放電 |
電池単体に対する新国家標準のテスト要求を見ると、過放電・過充電・外部ショート・加熱・温度循環・押し出しの6項目で、GB/T31485-2015 と比べると4項目減少している。電池パックテストでは落下と反転の2項目が減少し、モジュール等級試験はすべて取り消された。
表 蓄電池単体試験プログラム(GB/T31485-2015)
番号 | 検査項目 | 試験方法章条号 | 単体蓄電池番号 |
1 | 過放電 | 6.2.2 | 1#、2# |
2 | 過充電 | 6.2.3 | 3#、4# |
3 | ショート | 6.2.4 | 5#、6# |
4 | 落下 | 6.2.5 | 7#、8# |
5 | 加熱 | 6.2.6 | 9#、10# |
6 | 圧迫(押し出し) | 6.2.7 | 11#、12# |
7 | 穿孔 | 6.2.8 | 13#、14# |
8 | 海水浸水 | 6.2.9 | 15#、16# |
9 | 湿度環境 | 6.2.10 | 17#、18# |
10 | 低気圧 | 6.2.11 | 19#、20# |
電池単体の穿孔項目は取り消し、浸水テストの難度は引上げ
単体テスト項目の中で、最も厳しいと目されていた穿孔テストは、新国家標準の中では取り消されており、この点は昨年初めに公表されたドラフトと一致する。
しかし、関連文書の調査により、2017年7月1日に施行開始した「新エネルギー自動車生産企業および製品参入管理規定」(以下‟参入管理規定”と略称する)の附属文書3の中で早くも、穿孔実験は暫時実施しないと言及している。
付属文書3
新エネルギー自動車製品特別検査項目及び準拠標準
番号 | 検査項目 | 標準名称 | 標準号 | 注釈 |
1 |
エネルギー貯蔵装置(単体・モジュール) |
電動自動車用亜鉛空気電池 | GB/T
18333-2-2015 |
6.2.4, 6.3.4 水系電解液蓄電池に対する90℃傾斜試験は暫時不実施 |
車両用スーパーコンデンサー | QC/T741-2014 | |||
電動自動車用動力蓄電池循環寿命要求および試験方法 | GB/T31484-2015 | 6.5 稼働状況は、循環寿命に完成車の信頼性標準を合わせて審査を実施 | ||
電動自動車用動力蓄電池安全要求および試験方法 | GB/T31485-2015 | 6.2.8, 6.3.8 鑽孔試験は暫時不実施 | ||
電動自動車用動力蓄電池電気性能要求および試験方法 | GB/T31486-2015 |
2018年1月25日に公表されたドラフトに関する説明の中で、穿孔実験取り消しの理由について、「参入管理規定」内の穿孔実験の暫時停止を明確にする他に、起草グループがIECなど標準の調査研究で穿孔および穿孔試験と認識されるものを発見できなかったことなどが新国家標準中で穿孔試験の取り消しを決定した原因であるとしていた。
リチウムイオン電池単体穿孔
2017年1月17日に公布された「新エネルギー自動車生産企業および製品参入管理規定」の中で、GB/T31485-2015 標準において、穿孔は暫時実施しない項目となっている。ドラフト策定グループは、IEC62660-2 、IEC626603-3 などの標準を調査・研究して、全ての穿孔試験を採用せず電池の安全性を評価していることを発見した。作業グループの討論を経て、穿孔試験と認識されるものと実際のモデルが符合していないことで一致した。このため、本標準の中で穿孔試験の取消が決定した。
穿孔試験の取消に関して、業界関係者は、大多数の製造業者にとって一番難しい局面であり、特に三元電池がそうであると認識している。そのため、穿孔が取り消されたことは幸運なことと自覚し、却って業界の安全意識が向上したと言っている。
これに対して、国家応急管理部新エネルギー自動車安全教育プロジェクト専門家委員会郭棟副組長は第一電動に、穿孔事故の場面は、新エネルギー自動車の使用中に発生する確率は非常に低いが、一般消費者向け電子機器および電動工具類の電池に対してはこの項目の試験は重要であると語っている。
新国家標準の中で電池単体の穿孔試験が取り消されてはいるが、附属文書Cの熱拡散に関する乗員保護分析と検証報告の中で、熱拡散試験の選択可能方法として穿孔触発を載せて推奨しており、同時に「参入管理規定」の中で「暫時実施せず」との記載は曖昧さを残している。これは将来、穿孔試験が復活するのではないかとの推測の余地を残している。
今回の国家標準改定の動きで重要な別の一面は、海水浸水試験を浸水安全試験に変更したことである。先ず、試験対象を蓄電池パックあるいはシステムから、8.2.1 によって振動試験後の電池パックあるいはシステムに変更し、次に試験方法を旧国家標準の海水浸水の他に、方法2を追加した――試験対象はGB/T 4208-2017 中の 14.2.7 で述べる方法およびプロセスで試験を実施する。しかも、方法2に基づき実施する試験後はIPX防水等級7級標準を満足させる必要があり、これはまたドラフトとも微妙に異なるところがある。業界関係者は、これが新国家標準の中の試験の難しい点の一つであると認識しているという。
これに対して、ある電池企業の技術関連従業員が第一電動に、この検査の難度が大幅に上がることはないが、電池パックあるいはシステムの設計および製造に対しては更に高度な要求を提示することになり、電池パックあるいはシステム使用後の浸水安全を考慮する必要があると語った。