シンガポール、商用車排ガススキームを2021年4月より開始予定

2020年3月4日、シンガポール陸上交通庁(LTA)は環境庁(NEA)と共同で、「排ガス量に基づく商用車両スキーム(CVES:Commercial Vehicle Emissions Scheme)」を導入すると発表した。対象は、輸入された小型貨物車(LGV)、貨物兼乗用車(GPV)、小型バスであって、最大積載重量(MLW)が3500kgを超えない全ての新車および中古車である。またCVESの導入と併せて、既存の車両カテゴリーC(商用車)を対象とした「早期買い換え制度(ETS:Early Turnover Scheme)」も内容を拡張すると発表した。これら2制度の実施期間はいずれも、2021年4月1日から2023年3月31日までである。なお、本件は環境水資源省(MEWR)の2020年予算委員会の審議において発表されたもの。

 

これまでシンガポールは、オゾンや粒子状物質(PM)といった有害物質の主な排出源である自動車排ガスを削減するべく、Euro 6排出基準の導入、乗用車およびタクシーを対象とした「排ガス量に基づく車両スキーム(VES:Vehicular Emissions Scheme)」の導入、既存のカテゴリーC(商用車)のためのETSの導入、使用中の排ガス基準の強化など、様々な取り組みを実施してきた。以下、今回発表された取り組みを概説する。

 

排ガス量に基づく商用車両スキーム(CVES):

CVESは、乗用車を対象としたVESと同様、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)の5つの物質の排出量のうち、最も環境面でのパフォーマンスが低い項目に基づきLGVをA、B、Cの3つのクラスに分類し、クラスごとに以下のインセンティブ/課徴金を付与するものである。

 

クラス 汚染物質 インセンティブ/課徴金 (+/-)
CO2 (g/km) HC (g/km) CO (g/km) NOx(g/km) PM(mg/km)
A <150 =0.0 =0.0 =0.0 =0.0 +3万SGD
(約215万円)
B 150<
B <280
0.0 <
B <0.039
0.0<
B <0.270
0.0<
B <0.008
0.0<
B <0.9
+1万SGD
(約74万円)
C >280 >0.039 >0.270 >0.008 >0.9 -1万SGD
(約74万円)

 

上記のとおり、クラスAの車両には年間3万SGD(約215万円)のインセンティブが付与される。この額は、一般的な車両のオーナーが3年間で使用する額である。クラスBの車両には、車両登録時に1万SGDのインセンティブが先払いされる。一方、クラスCの車両には、車両登録時に1万SGDの追徴金が課される。電気自動車の電気消費量に関しては、0.4g CO2/Wh の排出係数を適用して化石燃料を用いた発電に伴って発生するCO2を考慮に入れる。この係数は、国連欧州経済委員会(UNECE)の規則第101(試験手順)に基づき測定されたものである。

 

早期買い換え制度(ETS)の拡張:

ETSは、Euro導入前およびEuro 1に該当するカテゴリーC車両の早期買い換えを促すため、2013年に初めて導入された。その後、2015年にETSは拡張され、Euro 2または3に該当するカテゴリーCのディーゼル車も対象に含められた。また、Euro 6相当の車両に買い換える際には追加のインセンティブが付与された。この制度の下、2019年12月31日までに4万7000台の汚染物質を発生する車両が買い換えられた。

 

今回の制度拡張により、2021年4月1日以降、Euro 4に該当する既存のカテゴリーCのディーゼル車もETSインセンティブの対象となる。これによりETSの対象となる車両は約2万2000台から6万3000台超と大幅に増加する。Euro 2/3/4に該当する既存のカテゴリーCのディーゼル車をEuro 6に相当するクラスAまたはBのLGVに買い換えた場合、オーナーはETSとCVESの双方のインセンティブを受けられることとなる。消費者に環境性能の高い車両への買い換えを促すため、Euro 2/3/4に該当するカテゴリーCのディーゼル車のオーナーがカテゴリーCのLGVに買い換えた場合にはインセンティブは発生しない。インセンティブが最も高くなるのは、既存のカテゴリーCのディーゼルHGV(重量積載物車両)を、テールパイプからHC、CO、NOx、PMを排出しないHGVに買い換えた場合である。