2018年9月に始まった、バッテリーを対象とするEUのエコデザイン予備調査に、新たな進展が見られた。2020年3月10日、2019年に追加的に始まった4つのフィジビリティスタディ(Work Package1~4と称されている。各パッケージの概要は、文末【過去の関連トピック】の関連記事で報告済み)の最終報告書のプレプリント(査読前の原稿)が公表された。各文書は、以下の本プロジェクト専用ウェブサイト“Ecodesign preparatory Study for Batteries”で参照可能である。
https://ecodesignbatteries.eu/documents
本稿では、バッテリーのサプライチェーンを構成するすべての企業に関わる内容として、この中の「Work Package 4:EU域内市場に出される充電式バッテリーを対象とした、持続可能な調達(sustainable sourcing)要求事項(例:サプライチェーンのデューデリジェンス* 実施義務)の導入に関するフィジビリティ分析」の部分の、結論と推奨事項を以下にまとめる。
* 欧州委員会の域内市場・産業・起業・中小企業総局による、「デューデリジェンス(due diligence)」の解説は次の通り:
企業が、実在のおよび潜在的な悪影響を特定、防止、緩和、そして説明するプロセスのこと(多国籍企業のためのOECDガイドライン、第二章(一般政策)10項の説明より)。サプライチェーン・デューデリジェンスは、紛争や、関連する不利な影響に加担しないようにするために、企業が自社の購買や販売を監視および管理するプロセスのこと。実施中のプロセスの他に、予防的なプロセスや事後的なプロセスも含まれる。詳細は、以下の欧州委員会 域内市場・産業・起業・中小企業総局のウェブサイトを参照。
https://ec.europa.eu/growth/sectors/raw-materials/due-diligence-ready/explained_en
本報告書の結果に基づいて、サプライチェーン全体で電池材料調達の持続可能性を確保し、「EVによる低炭素輸送」と「環境面や社会面で有害な電池材料採掘や電池製造プロセス」の間のトレードオフを回避するためには、規制(a regulation)が必要であることは明らかである。そうした規制は、以下に挙げる内容を考慮することが推奨される。
- 規制の主軸としての、デューデリジェンスの義務付け。このデューデリジェンスは、選択した原材料の採掘からEUでの上市に至るまでのサプライチェーン全体を対象とするものとする。
- 本デューデリジェンスは、「環境」と「労働衛生」の側面がそのプロセスに含まれていることを確実にするために、できるだけ、≪OECD DDG for RBC(責任ある企業行動(RBC)のためのOECD デュー・ディリジェンスガイダンス)≫ をベースとするべきである。
- 規制の枠組みとして、≪OECD DDG for RBC≫ ではなく、≪OECD DDG CAHRA(紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンスガイダンス)≫が選択される場合には、「環境」と「労働衛生」の側面を、OECD DDG CAHRAで強調されている「人権問題」に合致する形で含めなければならないことに明確に言及する必要がある。
- デューデリジェンス活動に関する義務的な年次報告書。これには、実績特定されたリスク、そして講じられたリスク軽減措置を含むものとする。また、株主に対する同社の年次報告書の一部として公表される必要がある。
- すべてのデューデリジェンス手続きに対する、独立した第三者機関による監査の義務付け。
- ISOやその他の環境基準への準拠を自主的に行うようにさせ、これを年次デューデリジェンスレポートで報告させる。
- ワーストプラクティスの鉱業や生産方法をブラックリスト形式でまとめ、環境パフォーマンスに対する義務的な最小要件を設定する。
- 以下の項目に関する定期的な査定の実施により、同規制を評価し、持続可能性要件を経時的に増やしていくようにする。
- デューデリジェンスに基づくアプローチの有効性
- ブラックリストに追加掲載すべきワーストプラクティス