EUの自動車型式認証制度では、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)をはじめとする各種大気汚染物質の排出基準値は、「欧州排出ガス基準(European emission standards)」として定められている。基準値は段階的に厳格化されており、軽量自動車(Light-duty vehicles、乗用車および小型商用車(バン))では、2014年から「Euro 6」が適用されている。また、重量車(heavy-duty vehicles、トラック・バス・コーチ)向けにも同様に欧州排出ガス基準が定められており、2013年来適用されている現行基準は「Euro VI」と言う。
欧州委員会は2020年3月27日、現行のEuro 6/VIに代わる次期Euro 7 を策定するためのイニチアチブを開始した。2020年4月24日まで以下のサイトでフィードバックを受け付ける。イニシアチブの概要が記されている「評価ロードマップ/開始影響評価(combined evaluation roadmap / Inception Impact Assessment)」(Ares(2020)1800668)も、同サイトでダウンロード可能である。
このイニシアチブは、EUグリーンディールの一部を構成しており、すべてのガソリンおよびディーゼル駆動の乗用車(cars)、バン(vans)、トラック(lorries)、そしてバス(buses)を対象に、より厳格な排出基準を「規則(Regulation)案」として策定するものである。なお、これまでは軽量自動車と重量自動車を分けて個別の規則が制定されていたが、これを一つの規則に統合することが想定されている。
「開始影響評価(Inception Impact Assessment)」に記載されている概要の中から、現行のEuro 6/VIの問題点として予備的に特定された3つの点を以下に示す。
- 現行基準は、その複雑さに妨げられている。特に、≪乗用車/バン≫と≪トラック/バス≫向けに異なる規制枠組みが設定されており、Euro 6とEuro VIの各適用スケジュールも異なり、排出試験の種類は膨大で、しかもそれらのすべてが複雑であり、さらに燃料の種類や駆動テクノロジーによって排出基準が異なる。このような複雑な規制では、環境や健康の保護を最善の形で保証することはできない。特に、様々な方法での自動車認証義務によって、メーカーと加盟国当局の双方で試験の手間や管理上の負担が高まり、基準の適用に際して誤った解釈が生じかねないというリスクを招いている。
- 現行基準は10年以上前に採用されたものであり、排出削減の最先端テクノロジーを反映するものではなくなってしまっている。特に、今日懸念されている汚染物質の中には、過去には様々な理由で考慮されなかったものがある。
- RDE(Real Driving Emission)はまだ、Euro 6/VIの全使用条件の下で測定されているわけではない。その上、大気汚染物質はEUの道路を走行する自動車の生涯を通じてモニターされているわけでもない。車載診断システム(OBD)が車両改ざんを制限するのに効果的なツールであるかどうかが証明されていない現状、不相応に高い排出量を防止するためには、リアルワールドの排出量を測定することが重要になっている。
今後の展開とスケジュール
- 2021年第4四半期:欧州委員会による規則案の採択
(2020.04.12 et)