米NHTSA 、「HVおよびEVに関する最小音要件」の暫定最終規則を公表

2020年9月1日、米運輸省(DOT)道路交通安全局(NHTSA)は、連邦自動車安全基準第141号(FMVSS 141)「ハイブリッド車両および電気自動車に関する最小音要件」の段階的導入とコンプライアンス要件に関し、6ヶ月の猶予期間を設ける暫定最終規則を公表した。これは、業界団体であるAlliance for Automotive Innovation(以下Alliance)から提出された「緊急請願」に対応したもので、COVID-19の公衆衛生上の緊急事態によるサプライチェーンの混乱のため、メーカーがFMVSS 141の遵守に際して直面する課題が詳述されており、3点の変更を要請している。NHTSAは、同3点すべてについて意見を募集している。

 

【FMVSS 141の背景】

・NHTSAは、2011年1月に議会で可決されたPSEA(Pedestrian Safety Enhancement Act of 2010)に基づき、2016年12月14日、最終規則を公表し、ハイブリッド車両および電気自動車に関する最小音要件を定めた新たな連邦自動車安全基準(FMVSS 141)を制定。これは、歩行者(特に視力の弱い人)や自転車などの道路利用者を守るため、ハイブリッド車両(HV)および電気自動車(EV)に車両接近通報装置を搭載させることで、これらの「静かな」車両が低速の歩行者衝突事故に巻き込まれるリスクを低減させるもの。

・FMVSS 141の段階的導入要件については、再考を求める請願に応じて発行された2018年ルールによって修正、2019年9月1日に開始、2020年9月1日に完全実施される予定であった。

 

【Allianceの請願内容】

・しかしながら、段階的導入期間の途中でCOVID-19の公衆衛生上の緊急事態が発生したことにより、公衆衛生と経済は大きな影響を受けた。グローバルなサプライチェーンの混乱により、メーカーは新たな部品の獲得、車両のリデザインの実施、自動車の製造などを行うことができず、現在もなお、部品の獲得や生産量をフルボリュームに戻すことが困難な状況が続いている。

・そこで、Allianceは「緊急請願」を出し、その中で以下3点の変更を求めている。

(1)現在の段階的導入期間(2019年9月1日~2020年8月31日)を2020年9月1日~2021年8月31日に延期。

(2)完全準拠の開始を2021年9月1日に延期。

(3)段階的導入期間中の性能要件を簡素化。

 

【NHTSAの判断】

・検討の結果、NHTSAは、COVID-19による自動車産業への混乱は予測できず、有効なコンプライアンス計画が現実的ではないため、段階的導入日と完全施行日の延期を認める決定をした(上記(1)および(2))。しかし、段階的導入期間中の性能基準の簡素化(上記(3))は採用しない。

・上記(1)および(2)について、COVID-19による今回の混乱で多少の遅延を与えることを正当化するものではあるが、1年よりも6ヶ月の方が適切であると考える。

・また上記(3)について、以下の理由から採用しない。

(a)段階的導入期間の延期により、メーカーに十分な救済を提供できると考える。

(b)NHTSAは過去に同様の代替案を検討したが、音の周波数コンテンツの規定が不十分で、代替案を満たす多くの音が検出できない可能性があることを確認しており、Allianceが提案した代替案の有効性に懸念を抱いている。

(c)Allianceの請願書には、簡略化された性能要件がCOVID-19公衆衛生上の緊急事態による負担の緩和につながる理由が説明されておらず、十分な根拠に欠けている。

 

【今後のスケジュール】

・2020年9月16日まで、上記3点につきコメントを募集

・2021年3月1日に完全実施

 

【参考資料】

官報-暫定最終規則

Rule: Federal Motor Vehicle Safety Standards: Minimum Sound Requirements for Hybrid and Electric Vehicles

https://www.federalregister.gov/documents/2020/09/01/2020-19334/federal-motor-vehicle-safety-standards-minimum-sound-requirements-for-hybrid-and-electric-vehicles