2020年12月10日、欧州委員会は「電池指令（Directive 2006/66/EC）」に代わる新たな法令として「電池規則（Regulation）案」を公表し、2021年2月5日までの意見募集を開始した。また、同日には影響評価報告書やQ&A文書も公表されている。持続可能性要件の導入、カーボンフットプリント宣言など新しい概念の導入、価値ある原材料回収要件の創設、適合性評価制度の導入など、非常に大幅な刷新が図られている。
以下、要点がまとめられているQ&A文書から一部を紹介する。
１．なぜ電池に関する新しい法令が必要なのか。
新しい社会経済状況、電池需要の増大、新しい種類の電池の登場と普及、廃棄物の低減対策、グリーン経済への移行、循環経済、重要な原材料の回収など新しい戦略などに対応するためには、2006年の現在の電池指令の内容では充分ではなく、改善が必要とされた。
そのため、新しい規則案では、生産工程から設計要件、二次使用、リサイクル、リサイクル材料の新しい電池への組み込みまで、電池のライフサイクル全体に対応する包括的な枠組みを確立している。
２．欧州委員会が今回の規則案で達成しようとしていることはなにか。
規則案の目的は、EU市場に上市される電池が、そのライフサイクル全体を通じて持続可能且つ循環型で、高性能、安全なものであり、回収、再利用、リサイクルされ、価値ある原材料の供給源となることである。このために本提案では、電池のバリューチェーンの各段階で具体的な要件を定めている。
３．規則案の主な焦点はなにか。
規則案では次の項目についての義務化を提案している。（一部を紹介）
■ 持続可能性と安全性（カーボンフットプリント・ルール、最低リサイクル率、性能と耐久性の基準、安全性のパラメーターなど）
■ ラベル表示と情報（持続可能性に関する情報、電池の状態や期待寿命に関するデータの保存など）
■ 使用済み製品の管理（生産者責任の拡大、回収目標と義務、リサイクル効率の目標、回収材のレベルなど）
さらに、本規則案には、強制力を持つグリーン公共調達に関する規定や、適合性評価に関する規制内容などの内容も盛り込まれている。
４．規則案はどのようにヒト健康と環境の保護を改善させるのか。
例を挙げると、水銀を含む電池とカドミウムを含む電池の禁止、廃電池の個別回収義務の強化、廃電池の埋め立ての全面的な禁止、鉛蓄電池のリサイクル効率の目標の厳格化、電池のバリューチェーンにおけるリチウムの重要性を踏まえ、リチウム電池の新たな目標を導入などがある。さらに2025年と2030年までにコバルト、リチウム、鉛、ニッケルという価値ある材料の特定の回収目標を達成するように設定されている。
５．提案されている電池の持続可能性と安全性の基準は。
2024年7月1日からは、市場で販売される特定の産業用・電気自動車用二次電池は、「カーボンフットプリント宣言（carbon footprint declaration）」をしなければならないなど、新しい概念も導入されている。また、2027年1月1日以降は、特定の産業用および電気自動車用電池は、リサイクルされたコバルト、鉛、リチウム、ニッケルの含有量を申告しなければならないという要件も含まれている。
６．EUへ輸入される電池にも適用されるのか。市場に出回っている電池が規則に準拠していることをどのように保証するのか。
規則案では、上市前に電池が遵守すべき持続可能性要件や安全性要件を規定しており、EU域外で製造された電池については、EU域内への電池の輸入者または販売者が、特定の要件について適合性証明が求められている。
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【関連URL】
規則案 本文
規則案 附属書