アルゼンチン大統領が2021年3月1日に通常国会開会の挨拶で、2021年中に、持続可能なモビリティや、電気自動車の国内生産、リチウムから始まるバリューチェーン確立など、電気モビリティに関する法案を発表すると述べたが、法案に関する以下の概要が、2021年3月4日に現地メディアで報道された。
生産開発大臣によれば、電気モビリティ法案は、世界が石油燃料車からリチウム電池やグリーン水素燃料車に漸進的に移行するなかで、アルゼンチンを単なるリチウムの採掘国からバッテリー生産国に転換することや、公共バスの非伝統的エネルギー使用車への移行、その他の自動車も電気自動車やハイブリッドカーに大幅に移行することを目指し、関連産業を開発するものとなる。
同大臣は、政府が国会に提出する法案により、税優遇措置などを実施し、今後短期的に50億米ドル(約5443億円)の投資が創出され、国内産業の統合と輸出の促進が期待されると述べている。また、リチウム採掘をベースとした自動車産業の発展により、アルゼンチンを南米全体の生産プラットフォームとすることが可能となると述べている。
アルゼンチンでは隣国のチリやボリビアと並んで、北部にあるリチウム鉱の採掘が近年ブームとなっているが、アルゼンチン政府は、単なる資源採掘ではなく工業国とすることを目指している。本法案では、非伝統的燃料車のアルゼンチン国内での設計、研究、イノベーション、開発、生産、販売、使用を国益とすることがうたわれると報道されている。また自動車だけでなく、自動車部品や付属機器、交換部品、消耗品、持続可能なモビリティ関連サービスも、奨励されることになる。
また現在作成中の法案では、持続可能なモビリティ推進制度を創設して2040年12月31日まで継続することや、今後10年間で公共バスをすべて持続可能な自動車とすること、持続可能な自動車の購入税の上限付き免除などの税法上のインセンティブ供与、持続可能な自動車や関連部品、機器などの製造工場への投資登録制度の立ち上げなどが提案される。
なお、アルゼンチンでのリチウム電池製造に関しては、国内にグラファイトがないことや、水や天然ガス、鉄道へのアクセス、電力不足などが課題であると考える民間企業が多いと、報道では指摘されている。